交通事故と後遺障害

交通事故が起きてしまって、外傷などが治った後も、なお体に機能障害や神経症などの傷害が残ることがあります。これを後遺症といいます。

この後遺症のうち、一定の要件を満たしたものを後遺障害といい、認定した等級(等級認定)に応じて損害賠償金額が決まる仕組みとなっています。

逆に言うと、適切な後遺障害の認定をしてもらえなければ、適切な賠償を受けることができません。後遺障害と認定してもらえなければ、症状が固定した後の損害は一切賠償されないことが一般的です。

後遺障害として等級認定されるためには、次の4つの要件を満たす必要があります。

・負傷または疾病が治ったときに残存するもので当該傷病と相当因果関係があること
・将来においても回復が困難と見込まれる精神的または身体的な毀損状態であること
・その存在が医学的に認められること
・労働能力の喪失を伴うものであること

後遺障害の慰謝料は、示談交渉のときに、一般的に弁護士基準にしたがって決めることが多いです。

後遺障害の症例と等級についての例は次のとおりです。

(例1)高次脳機能障害 等級:1~3、5、7、9級
交通事故で脳挫傷、くも膜下出血などをおい、頭部にダメージを受けたことが原因で、コミュニケーションや感情のコントロールについて障害を受けた、深刻な後遺障害です。

(例2)遷延性意識障害 等級:1級
交通事故の怪我による脳挫傷などによって発症する意識障害で、いわゆる植物人間状態です。意識がなく、言葉を発したり身体を動かすこともできません。

(例3)醜状障害 等級:7、12、14級
交通事故のため、頭や顔、手足といった、日常露出する部分に、目立つほどの傷跡や欠損、変色が残った場合です。傷の大きさや性別で等級が変わり、傷跡が著しい場合には、男性は12級、女性は7級と認定されます。

また、交通事故時の後遺症としておこりがちな「むちうち症」、医学的には外傷性頚部症候群と呼ばれる症状は、後遺障害と認定されたり、認定されなかったりすることがよく問題になるようです。

ひとくちにむちうち症といっても様々な症状があります。ここでは4種類の症例をご紹介します。

(頚椎捻挫型)

頚部(首)を動かした時の痛み・首が動きにくい運動制限・首や背中のこり・頭痛・めまいなどが発症すると言われています。

(頚椎神経根型)

障害を受けた神経の支配下にある部分の知覚障害・しびれ・麻痺・筋力の低下・反射の異常などが発症すると言われています。 脊髄症型は椎骨に囲まれた脊髄が何らかの原因で障害されたものです。上肢だけでなく、体幹や下肢にも何らかの症状が出る場合があります。

(バレリュー症候群)

内耳の症状(めまい・耳鳴り・難聴)、眼の症状(眼がかすむ・眼の疲れ・視力低下)、心臓の症状(心臓部の痛み・息苦しさ)、咽喉頭部の症状(喉の異常感・かすれ声・食べ物がうまく飲みこめない0)・全身の倦怠感・集中力の低下などが発症すると考えられてます。 耳鼻科・眼科的所見が多いが、他覚的所見に乏しく、自覚的・主観的愁訴が主となっています。

(低髄液圧症候群)

脳脊髄液が減少することにより慢性的な頭痛、頚部痛、めまい、嘔気、視力障害、倦怠、集中力・思考力・記憶力低下など様々な症状が発症すると言われています。 むちうち症の様々な症状の発症と考えられています。

むちうち症が後遺障害として等級認定されるときは、12級13号、14級9号、非該当のいずれかに認定されることが多いです。

12級13号と認定される場合は、神経症状の存在が他覚的に証明され、神経学的所見から証明可能な場合です。14級9号と認定される場合は、症状の存在が医学的に説明可能な場合で、被害者の訴える症状が医学的に説明できる場合がそうです。

そして、証明できない場合は、非該当と認定されます。

むちうち症は事故発生当日よりも数日経過してから発覚することもあり、また、等級認定がなされる場合となされない場合では、損害賠償金額が大きく違ってきます。交通事故発生時に自覚症状がなくても、おそくとも3日以内には病院に行き、きちんと診断してもらうことが重要です。

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