交通事故の示談
交通事故というと、示談という言葉を何度も聞くことになるだろうと思います。そして、慰謝料という言葉も。
慰謝料は、ニュースで芸能人のだれだれが離婚した。慰謝料は5千万円というようなことを聞いたりしますので、なんとなく意味はわかっている方も多いのですが、示談というと交通事故をしてしまったとき、または交通事故にあってしまったときくらいにしか聞きませんから、示談金と慰謝料を同じものだろうと思っている人も多いようです。
実は示談金と慰謝料は違います。慰謝料は示談金の一部なのです。
示談金とは、交通事故の被害者が負った損害をすべて金額に換算し(これを損害賠償金といいます。)被害者と加害者の双方が合意した金額のことです。
示談金=治療費+休業損害+入院雑費+通院交通費+「慰謝料」となります。
慰謝料とは精神的な苦痛を金銭に換算したものです。
さて、交通事故が起きた場合、加害者と被害者の間で示談交渉が始まります。本人同士がやってもいいのですが、通常は、加入している保険会社の示談代行サービスや弁護士といった示談代行の専門家に任せるのが普通です。
示談交渉は示談金について双方が合意し、確定することを目的に行われる交渉です。いったん合意してしまうと、それ以上、被害者から加害者にお金を請求できませんので注意が必要です。
まず、交通事故の場合、事故直後には気づかなくても、のちのち後遺障害の症状がでてくる可能性があります。
ですので、被害者になったら、ケガが完治するか、または後遺障害の等級が確定してから行わなければなりません。
これらが確定する前に、示談交渉が先に終わってしまったら、あとで事故が原因の後遺障害が残った。といってもお金は請求できないのです。
加害者側やその代理人は、早めに示談を終わらせたいという気持ちがあります。というのは、事故を起こしたことによる刑事責任があり、示談が終わっていたら刑も軽くなるという事情があるからです。
しかし、先に述べたように、示談交渉を急ぐと被害者は泣き寝入りという結果になりがちですから、急がないようにしましょう。
交通事故が起きたときの、自賠責保険の請求できる時効期限は事故が起きた日から2年間、損害賠償が請求できるのは事故日から3年間です。
期限を意識しつつ、交渉が長引きそうならば、内容証明郵便を送るなどして時効を中断することもできます。交渉が不利にならないように、あせらずに交渉しましょう。
もうひとつ、注意すべき点として、示談交渉の前は、交通事故時の慰謝料の相場を把握しておくべきであるということです。慰謝料には相場があり、入通院にかかわる慰謝料は、日本弁護士連合会の交通事故相談センターが「損害賠償算定基準」、通称「裁判基準」または「弁護士基準」という慰謝料相場を発表しております。
そして、示談交渉時にもこの基準に基づいて慰謝料が計算されることが多いようです。
仮に、交通事故でその他の精神的な苦痛が発生した。といっても交渉時に考慮されることは少ないようです。納得が行かない場合は、専門家に相談してみましょう。
示談金額について双方が合意すれば、示談交渉は終了です。示談書が作成され、今後、被害者は加害者にそれ以上の損害賠償を請求できません。
示談書は自動車保険の請求の際に必要な書類となります。
仮に示談交渉がまとまらず、双方が合意できない場合は、裁判ということになります。これは保険会社の代わりに裁判官が仲裁し、双方がまとまれば和解調書が作成されます。
そしてこの和解調書は判決と同じ効力を持つことになります。
交渉で大事なことはあせって結論を出さないことです。不慣れだったり、精神的に弱ってしまい、ついつい妥協してしまいがちですが、気をしっかりと持って、不利にならないように交渉しましょう。